「CDs」に収められているCDは、1960年代から1990年代、あるいはそれ以前の、相川の好みに合ったアルバムであり、彼の極めて個人的な思い入れに基づいて選出されている。 現在、音楽をWeb上で得るという風調にシフトしているため、レコード店が閉鎖するという事態が多発しているが、相川が展示に設置した試聴機は、日に日に時代遅れになる古い音楽供給形態への敬意を表していると言える。ヘッドホンをつけて、相川自身が記憶を頼りに歌うアカペラの、調子はずれな歌を試聴されることをお奨めしたい。さらに付け加えるなら、この彼の「模擬する」というパフォーマンスは、カラオケのお楽しみタイムだけではなく、奇妙なことに、今やCDが廃れつつあるという事象 ―無数の曲のコピーやWeb上での録音作業、特にYouTube― を思い起こさせる。この無限大に広がるサイト(YouTube)は、今や個人だけでなく公式なバンドも、数え切れない程のフアンが真似た歌やミュージック・ビデオ、カバー曲をアップしている。相川の歌声は、人々がWebカメラをつけて全世界へ放送することができるようになる以前の、私達が寝る前に一人で好きな歌をうたって過ごしていた時代への郷愁をかきたたせる。しかも相川のCDには、最強のフアンのみが持つ強いこだわりが満ち溢れている。 入念に描く作業や、根気強いパフォーマンスが見せるように、相川が制作した「CDs」の展示は、オンライン上で音楽を聞くという一般の風調に反した、まさに正反対の自己の全精力を駆使して、自己の感じる対象芸術作品の芸術性を表現しようとする姿勢にあふれている。

相川の精緻な筆使いは、大量に生産された製品を、素晴らしく入念に作られた芸術品に転換するということが、何を意味するかという問題を提起してはいる。しかし彼の作品作りそのものについて、過剰に価値のあるものであるというのは当たらない。現にアーチストである彼自身が、自分の作品作りそのものをそんなに価値があるものであるとは受け止めていない。彼のホームページにはこの作品に関して、遊び心があふれる「Tips」のリストがあり、例えばこうある。「数多くのコピーバンドがあるが、自分が一番上手い。」「日本人はモノマネが上手い」。数えきれないアーチストやミュージシャンが醸し出している不協和音のまっただ中で、試聴機のヘッドホンを耳に当て、その真に不思議な何かを聞けば、相川のCDに心穏やかな空間と時間が織り込まれていることを理解するであろう。

- Ashley Rawlingsの批評より抜粋

制作年:2010年〜 技法:キャンバスにアクリル、ケントボード、CD-ROM、CD視聴機(NAKAMICHI MB-K300s) サイズ:5.5×5.5 inch:14×14cm

Tips
私は楽器を弾くことが出来ない
数多くのコピーバンドがあるが、自分が1番コピーが上手い。
私は絵画や彫刻よりも音楽をより愛している
ミュージシャンにまつわる伝説を聞くのが好きだ。
この作品を作っている時、私は愛し、尊敬しているミュージシャンの様になれる。
私は時々、曲を熱唱している自分をカッコイイと思う時がある。
好きなCD達の中から描くCDを選択するのは大変だが楽しい
へヴィメタルのCDジャケットはカッコイイと思う
メタリカ(Metallica)よりメガデス(Megadeth)の方が好き
いいCDジャケットのCDにはいい曲が多い
Greatest Hitsは嫌い。
Itune music storeで曲を買った事はない。
Ipodは便利だと思う。
パンク/ハードコアの「D.I.Y」精神に共感する。
私の歌は展示会でしか聴くことができない。
アンディ・ウォーホルの作品が好きだ。
これらのCDは、コピーであると同時に、間違いなく私自身であり、私自身の作品である。